俺にはくれないの?【短編】
「青山さん、そこの段ボールの中の本、本棚に並べるんじゃないの?」
「え?あ、うん。そうみたい」
「俺、手伝おうか?その量を1人でやるのは大変でしょ?」
爽くんは誰にでもこうだ。
困っている人がいたら、優しく手を差し伸べてくれる。
こんな輝く笑顔を見せられたら、女の子なら誰だって好きになっちゃうと思う。
でも、この笑顔を独り占めできることはありえないから――
あふれだす想いを、おさえるのに必死だった。
「ううん、大丈夫。ありがとう。これは放課後に担当する人たちがやるみたい」
もう1人の担当は仕事をさぼっているから、この場にはわたしたちだけ。
久しぶりの空間に、思うように爽くんの目が見られない。