彼は私を偏愛している
その日の夜更け━━━━━━

抱かれた後、亜舟の腕枕で頭を撫でられ目を瞑る雛菜。
亜舟にはわからないように自分の太ももをつねって、眠らないように耐えていた。

それは亜舟の腕枕で亜舟の匂いに包まれ、更に頭を撫でられると安心して眠ってしまうから。

「ヒナ?」
「………」
「寝た…かな…?」
すると更に抱き締められた。

しばらく経つと、亜舟の寝息が頭の上から聞こえてきた。
ゆっくり顔を上げると、亜舟が眠っている。

「綺麗…」
思わず、呟く雛菜。
とにかく整った顔をしていて、イケメンと言う言葉で表現できない程の美しい容姿をした亜舟。
なので、寝顔は本当に綺麗だ。

「………って、見惚れてる暇なかった…」
亜舟を起こさないように、腕の中を這い出る。

「んんっ…」
「え!?お、起きた!?」
幸い、身動ぎしただけだった。

「せ、セーフ…」
音をたてないように、ベッドルームを出たのだった。

その瞬間、パチッと目を開ける亜舟。
そして、起き上がった。
「………やっぱ、なんか企んでる…!」

今日仕事から帰ってから、すぐに雛菜の様子がおかしいことを察した亜舟。
きっと聞いても答えないだろうと、雛菜の思うようにさせていた。

一方の雛菜は、亜舟の書斎にいた。
パソコンを前に、一人困惑していた。

「パスワード…わからない……」

情報うんぬんよりも、パソコン自体がたちあがらない。
「どっか、メモしてないのかな…」

でも頭が良い亜舟ことだ。
パスワードを忘れるようなことがあるわけがない。
忘れない為の、メモなんかするはずがない。

「ダメだ!とりあえず、小枝さんに電話……」

大枝に電話をかける、雛菜。
『はい』
「あの、相原です」
『あ、雛菜さん』
「ごめんなさい。パソコンのパスワードがわからなくて……たちあがらないんです」
『そう……だったら━━━━━』
「え……?小枝さんがここにですか?
━━━はい、はい、わ、わかりました。じゃあ、明日……」

書斎のドア前で、ずっと亜舟が聞き耳をたてていた。



「ヒナ、ちょっとおいで?」
夜が明けて、朝食後ソファに座った亜舟が手招きをした。
「ん?何?」
「ここ!おいで?」
自分の隣をポンポンと叩く、亜舟。

雛菜は頷き、隣に座った。
亜舟は雛菜のスカートを捲り上げた。

「キャッ!!亜舟くん!?」
「ヒナ、この痣…どうしたの?」
「え?あ…」
そこは、雛菜が眠らないようにつねっていた太ももだ。

「どうしたの?」
「あれー?どうしたんだろ?どっかにぶつけちゃったのかも?」
とぼけたように言った、雛菜。

「………」
「亜舟…くん?」
「…………でも、昨日の夜はなかったよ」
「え?どうしてわかるの?」
「昨日も愛し合ったでしょ?
ヒナのことは、全部把握してるんだよ?」

「あ!夜中におトイレに行って、寝ぼけててぶつけたのかも?」
「………ふーん。痛い?」
「だ、大丈夫だよ」

亜舟は雛菜の足を持ち上げ、太ももの痣にキスをした。

「え……!?亜舟く……」
「消毒…」
「え?」

「これ以上、僕のヒナが傷つかないように……!」

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