彼は私を偏愛している
別人
「飲み会?」
「そう!久しぶりに、大学ん時の仲間で集まってさ!」
佐近が、亜舟に書類を出しながら言った。

「行かない」

「はぁー、言うと思った…」

「わかってるでしょ?」

「でもよ。今回は葦原も来るみたいなんだ」

ずっと書類に目を通していた亜舟。
目線だけ、佐近に向けた。

「………はぁー、わかったよ。行けば良いんでしょ?」
「よし!会社の更なる発展の為にもな!」

━━━━━━━━━━━━━
「飲み会?」
「うん、ごめんね。だから明日は夜遅くなる」
「そっか……寂しいけど、しかたないね!
わかった!楽しんできてね!」

雛菜は亜舟を見上げ、できる限りの笑顔を見せた。

(うー、既に寂しい……明日は一人かぁー
でもそんなこと言ったら、亜舟くんを困らせるし……)

「………ヒナ」
「ん?」
「寂しい?」
「え?あ、だ、大丈夫だよ!」

「僕が言ったこと、覚えてる?」

“僕には気を遣わないで”

「あ……」
「ね?本当のこと言って?」

「…………寂しい…」

「うん、そうだよね。ごめんね…」
「亜舟くん」
「ん?」
「ギュッてして?」
両手を広げて言う、雛菜。

「フフ…ヒナ、可愛い」
抱き締める、亜舟。

「亜舟くん」
「ん?」
「明日、ギリギリまで傍にいたい」
「うん、もちろんいいよ!」
「意味わかってる?」
「ん?」

「私も、一緒に行きたい!」


そして次の日━━━━━━━━
飲み会会場の居酒屋に、亜舟と雛菜は来ていた。

「じゃあ、私…
そこのバーガー店にいるね!」
「ん。わかった。ほんとに大丈夫?」
「うん!亜舟くん、心配性だなぁ(笑)」
「当たり前でしょ?
僕はヒナだけが生きがいなんだから!」

「あれ?亜舟?」
「あ、佐近」
「あ、えーと…ヒナちゃん!こんばんは!」

「あ、こ、こんばんは!えーと……」
「あ、そうだよね!俺は亜舟の大学の同級生で、亜舟の会社の社長秘書の保原です!」
「あ!貴方が秘書さん!相原 雛菜です!」

「可愛いね!あ、ヒナちゃんも一緒にどう?」

「え?でも……」
さりげなく亜舟の様子を窺う、雛菜。

「佐近!!」
「━━━━━━亜舟…!!?そんな、怒ることないじゃん!」
凄まじい“怒”の雰囲気に包まれている、亜舟。

「あ、亜舟くん!私、行くね!」
亜舟の雰囲気に、とにかくここを離れないとと雛菜は声をかけた。


「お前等、入口で何やってんの?」
そこに今度は、葦原が現れた。
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