彼は私を偏愛している
「んんっ…!!亜舟く…苦し…////」
タクシー内で、雛菜の口唇を貪っている亜舟。

雛菜は苦しさから、亜舟の胸を押し返した。

「ヒナ、ごめんね。
悲しませて、傷つけた……ごめんね…」
「ううん。やっぱり、無理矢理でもバーガー店で待ってれば良かったんだよ。亜舟くんと離れたくなくて、つい葦原さんの厚意に甘えちゃった…」

「……………放れたくないのは、僕の方だよ?」

「え?」

「前にも言ったよね?
ヒナと一つになって、放れられなくなりたいって!あれは大袈裟な表現じゃなくて、本心でそう思ってるんだよ」
「亜舟くん…」

「ヒナが大好き。
ヒナのことしか、考えられない。
ヒナにしか、何の感情も湧かない。
だからお願い!もう二度と、僕から放れようとしないで?」
額と額をくっ付け、すがるように言った亜舟。

「うん…」
雛菜は亜舟の首に巻きつくように、抱きついた。

「亜舟くん」
「ん?」
「もう一回…キス、したいな……」

「……ったく…!」
「え?」

亜舟は雛菜の頬を包み込み、顔を覗き込んだ。

「これ以上…僕の心を奪わないで?」


「━━━━/////!!?」
(心を奪ってるのは、亜舟くんだよ……/////)



そして一方の実広達━━━━━━━━
「実広、大丈夫?」
友人が背中をさする。

「う、うん…」

「実広、亜舟を甘く見すぎだ!」
「佐近…
なんか、悔しくて……」
「は?」
「私、本当はあんな甘い亜舟を知らないの。
私には冷淡で、酷い人だったから。
雛菜ちゃんに対しての態度に、嫉妬したの」

「「だろうな…!」」
佐近と葦原が、ハモる。

「え?二人はわかってたの?」
「だって、俺は亜舟は本気で人を好きになったことがないと思ってたから」
「俺も。
あいつは情が欠落してると思ってた。
業界では、血も涙もない冷酷な悪魔って言われてるからな」

「「ヒナちゃんと一緒にいるとこ見るまでは━━━」」

「亜舟は文字通り、ヒナちゃん“しか”見えていない」
「阿久津の親父も、かなりの狂った男らしいからな。しかもあいつは、それをはるかに越える狂人らしいぞ!」

「だからもう…関わるな」
佐近が実広を鋭く見据えた。
その亜舟の恐ろしさを物語った視線に、実広は静かに頷いた。

「………でもさぁー、ヒナちゃん可愛かったなぁ!」
「葦原、やめとけよ!俺は亜舟を怒らせたくない」
葦原の言葉に、佐近が言い聞かせる。


「わかってるっつうの!!」

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