彼は私を偏愛している
「亜舟くん?」

「離れたくないな…
片時も…離れたくない……!」
そのまま雛菜を引き寄せ、抱き締める。

「うん…
でも、これからはずっと一緒でしょ?」
亜舟の腕の中から見上げる、雛菜。

「フフ…そうだね!確かに、そうだ!
今日はそんなに遅くならないから、僕が帰るまで待っててほしいな?一緒にご飯作ろ?
遅くなる時は必ず連絡するから、それ以外はできる限り、何でもヒナと一緒にしたい!」

「うん!わかった!」
微笑み言うと、亜舟は頭をポンポンと撫でて額にキスを落として出ていった。


それから雛菜もゆっくり準備をしてマンションを出た。

「びっくりしちゃった!」
学食で昼食中の雛菜。
向かいに座っている瀬里が言う。

「ハハハ…だよね…」

「でも、スッゴいイケメンだったねー」
未華子も、感心したように言った。

「だよね!」


「ところで!
雛菜は、そのイケメンとどんな関係なの?」

「幼なじみなの。
でも、15歳離れてるから私にとってはお兄さんみたいな……
ずーっと好きだった人……
あ、ほら、私小学生の時に両親亡くしてるでしょ?
その時に約束してくれたの。
成人したら、お嫁さんにしてくれるって!
でも正直、その場の嘘だと思ってた。
私を慰める為の嘘」

「そしたら、向こうも本気だったってことね!」
「うん」
「良かったね!雛菜!」
「おめでとう!」
瀬里と未華子が、微笑み祝福する。

「━━━━━ってことは、頼廣が言ってた雛菜の好きな人って、あの人のことか!」
少し考えこんでいた瀬里が、ふと言った。

「え?」
ふと言った瀬里の言葉に、雛菜は向き直った。

「頼廣が言ってたの。
コクった時、好きな人がいるって断られたって。
でもその好きな人が、大学の中にいる風でもなかったから、誰?って」

「あ、うん…
嘘だって思ってたけど、どこかで信じたい自分もいて……だから、成人するまでは待とうって心に決めてたの。その後のことは、その後決めようって!」

「今度、ちゃんと紹介して!」
「うん!もちろん!瀬里ちゃんと未華子ちゃんには、会ってほしい!」


それから講義室に移動し、席についた三人。
少しして、頼廣が現れた。
「おはよっ!」
「おはよう、頼廣くん!」
「おはよー頼廣」

「隣、いい?」
頼廣が雛菜の顔を覗き込んで言った。
「どうぞ!」

隣に頼廣が座ると、ちょうど講義が始まった。

雛菜のスマホが震えた。
『今、講義中かな?』

亜舟からのメッセージだった。
思わず微笑み、机の下で返事をうつ。

「うん、講義中だよ(^^)」
『あー!講義中にスマホ扱うなんて、悪いヒナだなぁ(笑)』
「だって、亜舟くんからの連絡だよ!
気になるよ~」
『でも、嬉しいなぁ~すぐに返事してくれて!じゃあ、講義頑張って!』
「うん!亜舟くんも、お仕事頑張ってね☆」

その姿をずっと、横から頼廣が見ていた。
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