数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ
意地悪そうな目つきの慎一。
「じゃあ、キス、してみろよ。──ここで」
「あぁ、ええで」
慎一に全然動じない数馬。
かりんが「……えっ?!」と困惑の表情で数馬の顔を見上げた。
慎一が少し離れた所から腕を組んで二人の様子をじっと見ている。
数馬がかりんの耳元で囁く。
「目、つむって」
「うん………」
「俺を信じて。キスをするふりだけやから。安心して」
「うんうん」
「今、俺はかりんの一回限りの仮の彼氏。そう、思って」
「うん」
数馬くんが私の腰に手を回して体をピッタリと密着させた。
それは、まるでこれでもかというくらい慎一に見せつけるように。
私は数馬くんを信じた。
そして、私は目を閉じたまま静かにぴったりとひっついた体から伝わってくる数馬くんの心音を1つ1つ数えていた。
数馬くんの心音、想像していたよりも凄く早い。
ドキッ、ドキッ、ドキッ………、注意をしていないと時々どっちの心音かわからなくなってしまう。
お互いの唇の距離。
キスまで僅か1ミリの隙間をあけてくれた数馬くん。
凄っ、神業やん。