数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ


「そう、あれ。キスをしてるってことは、数馬くんはかりんのことが好きなんだよね?」



数馬が「あれは・………」と説明しようとした時、穂波が「ちょっと待って。私の話を最後まで聞いて──」と割って入った。



「もし、数馬くんがかりんのこと好きなん、かりんが知ったら……。かりんは、第一志望の北海道の大学へ行くのをやめるかもしれへんねんで……」


「……えっ?」


「だから、数馬くんは私を利用すればいいねん」


「えっ、どういうこと?」


穂波がこっちを向きながら廊下をゆっくりと歩いているかりんを見つけた。


穂波が「……こういうこと」とふいに数馬の頬に両手を添えてつま先に力を入れて背伸びをした後数馬の口元にそっとキスをした。


穂波は170センチの長身で少し背伸びをすれば数馬の唇に簡単にキスができる。


どう?と言わんばかりの得意気な表情の穂波が数馬とキスをしたまま眉を少し上げてかりんを見ている。


その時、数馬の視線からは、はっきりとかりんの頬に涙が伝っているのが見えた。
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