数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ


偶然にもその場を通りがかった勇斗が涙を流して立っているかりんに遭遇をした後、直ぐに2組の教室の中に目をやった。


なんとなく、かりんがどうして泣いている状況を把握した勇斗。


勇斗は自分が敗北したことを直ぐに自覚した。


もう卒業式までかりんからの返事を待つ必要がない、勇斗はそう思った。


勇斗は呆然としているかりんを優しくハグをし、かりんの頬に軽くキスをした。


無言のまま目を丸くして驚くかりん。


かりんの瞳からは次々と大きな涙の粒がまだ引っ切り無しにこぼれ落ちていた。


勇斗がハグを続けたままかりんの耳元で話す。


「数馬を振り向かせたかったら、アイツに少しやきもちを焼かせた方が良い。でも、俺の今のこのキスは父親譲りの挨拶のキスだから、俺とかりんのサヨナラのキス。──友達でいよう、俺はその方が良い」



そう言って勇斗はそっとかりんを離したあと何もなかっかのように少し俯いて一人廊下をまた歩き始めた。



勇斗が高校1年生と2年生の時、数馬とクラスが同じで仲が良かった。


数馬が穂波のことを突き放して走ってかりんを追いかけようとしたがもうどこにもかりんの姿は見えなかった。
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