数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ


昨日の今日でお互いに何か少し気まずい雰囲気が流れている。


本棚に背を向けたままのかりん。


どこからか咳払いが聞こえ、かりんと数馬が声を潜めて会話を始める。


数馬をじっと見つめるかりんの瞳の奥に力が入る。


「──数馬くん、昨日のことは、別に私は気にしてないから……」


そう言いながら、かりんが床に目線を落とした。


「いや、気にしてる、その言い方。俺が気にしてるねん、昨日のこと──。だから、ちょっと、説明をさせて……」


「もう、いいよ別に……」


「全然、いいことない。俺に少しだけ時間をちょうだい」とかりんが向かおうとしている先を数馬が腕をドンっとついて遮った。


「俺のこと、もう信じられなくなった?」と数馬がかりんに顔を近づける。


かりんが目線を合わせようとしない。


憂いを帯びた瞳の数馬がゆっくり「………かりん?」と名前を呼ぶ。


なんなん、そのずるい呼び方。


数馬くんに“かりん”って呼ばれると私は少しだけ弱くなる。
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