数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ
その後、私は数馬くんから穂波との話を全部聞いた。
「余計な、心配をかけてごめんな。俺、かりんだけやから」とかりんの長い前髪を数馬が少し指にかけて耳にかき上げた。
数馬が愛しそうにかりんの目を見つめる。
「かりん?北海道行く前に、俺、一つ条件を出してもいい?」
「えっ、なに?」
「北海道へ、行くんやったら。今すぐ、俺の“仮”を取って。じゃないと、行かせへんから」
なにっ、それ?
「“仮”、取るって?」
「仮の彼氏の“仮”。俺、かりんの彼氏になる。なりたいねん。かりんの彼氏に──」
「“仮”、取ってあげる──」
かりんが陽だまりのように微笑んだ。