数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ
・第6章
3月1日
神尾高校、卒業式の日。
慣れ親しんだこの校舎から今日は200名が巣立っていく。
この日をずっと待っていたような、でも心の中でまだまだ来てほしくなかったような気持ち。
嬉しいと寂しいが交互に入り交じる。
3年間を振り返ると本当に凄く早かった。
私が入学したばかりの頃、何がどこにあるやら全然わからなくて、だだっ広いこの校舎の中を右往左往しながら良く迷っていたなぁ。
厳粛な式が始まってから50分が経った頃。
ハプニングが発生した。
ピアノ伴奏担当の音楽の草刈先生が体調を崩した。
学校の先生達が急にそわそわと落ち着きなく動き始める。
この学校、音楽の先生はたった一人しかいない。
大事な音楽の先生が倒れたら、代わりになる人は誰もいないわけで。
で、ピアノ、誰が弾くん?
どうするん?
先生達あたふたしている。
それもそのはず。
先生同士が顔を見合わせては渋い顔をして手を横に小さく振っている。
眉間に深いしわを寄せて険しそうな顔の校長先生が時計をチラッと見てより一層焦った表情に変わる。
次はなんてたって【卒業生の歌】だから。