数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ


音楽の草刈先生が授業中に言っていたことを思い出した。



『合唱はミックスジュースと一緒です』


初めは何言うてんの?って思ったけど。


今、やっと分かったような気がした。


あぁ、このことなんやって。


数馬くんの弾くピアノの音色と3年生全員の歌声が美しくミックスされていく。


今まで練習をしてきた中で皆一番最高の歌声を今日は出し切っていると思えた。


皆と一緒にいられるのは本当にこれが最後やもんな。


最後まで数馬くんノーミスで堂々とピアノを弾ききった。


数馬くんが椅子から立ち上がり深く一礼すると拍手喝采が起こった。


それに動じることなく静かに自分の元の位置へ戻る数馬くん。


なんか凄くカッコ良すぎるんやけど。


あかんわ、こんなことされたら、私さらに惚れてしまいそうになるやん。


数馬くんが好き。


好きで、好きで、めっちゃ大好き。


なんか、私ばっかり、数馬くんのこと好き過ぎて腹が立つんやけど。


そう言えば、最近数馬くんからの『好き』あんまり聞いてないような気がするなぁ。


まぁっ、いいっか。


近い将来いつか数馬くんと一緒にセッションができたらいいね、数馬くんがピアノで、私がギターみたいな。


周りの女子達がほっぺたを赤くして数馬の方を見て何かヒソヒソ話しをしている。


きっと今、私が思うのにはこれで更に数馬くんのファンが増えた。


数馬くんのブレザーの第2ボタン、今日一瞬で取り合いになるかも。


学校一モテる彼氏の彼女は、それはそれなりに色々な心配事が増える。


心配事は言い出したら山のようできりがないが。


常に目を光らせておかないと隙を見ては数馬くんの側に直ぐ女の子が寄ってくる。


八の字眉毛になっている私があれこれと心配をしてもしゃーないか。
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