数馬くんのことが好きすぎて腹がたつ

──1年後の春

3月初旬頃。


かりんは大学1年生の終わり頃で、ちょうど春休みに入っていた。


私は高校を卒業してから北海道の大学へ通い、数馬くんは関西でアルバイトをしながら自分の夢を叶える為に努力の日々を送っていた。



遠距離恋愛のつらいところは会いたい時に直ぐに会えないこと。


お互い生活が忙しくて私達はまだ一度も会っていない。


当初まめだった数馬くんのラインが3ヶ月ほど前からめっきりと段階的に減って、ここ最近急に音沙汰がぷつりとなくなった。


なんなん、『俺は遠距離は絶対に自信があるから!』とかあんだけ自信満々な顔で言ってたのに。


もうしびれきれて、別れる準備を始めてるんちゃうの?


私が北海道にいることをいいことに、関西で遊んだりしてるんちゃうやろうなぁ、ほんまに。


関西を離れる前に恵にこんこんと言われた、『かりんの性格、おっとりしてる所があるから。ぼっーとしててら、数馬くん直ぐに誰かに取られてしまうかもしれへんで。まぁ、遠距離恋愛の秘訣はこまめに連絡を取り合うことやな』って。


だから、私は私から頻繁にここ最近ラインをずっと送っているのに。


既読無視の連続からレベルアップして既読すらつかなくなってきたし。


なんか、悲しい。


悲しすぎて、辛い。


私、今泣いたら広い海が直ぐに出来そうやわ。 


あかんは、なんかまた腹が立ってきた。


なんでやろう?


一週間後、数馬から唐突に【もうすぐ、会いにいくから待ってて。】とラインが届いた。



私が【いつなん?】、【いつ会いに来てくれるん?】ってラインの返信を送っても。


その後、ぷつりと数馬から返事が暫く来ることがなかった。


とうとう、別れ話でもしにくるんとちゃうやろうか。


あぁ、なんか腹が立つ。


連絡ぐらいちゃんとしてよ、私だって色々心配するやん。


私以外に好きな人でもできたんかなぁ。 


余計なこと、ぐるぐるまた頭の中巡りだすわ。


なんなん、数馬くん、ほんまに酷いわ。


ラインの返事来なくなったの今日で何日目なん?


かりんが指を折って数えている。


もう両手で足らへん?うそっ、もう1回かぞえなおすわ。


あぁ、……わからんようになったわ。


私は大学が春休みの間、大学から近いこともあって、おばあちゃんの職場の仕事を手伝いに来ていた。


「かりん、ちょっと来て手伝ってくれるー?おばあちゃん、背が低いからちょっともう無理やわ」


「ちょっと、待ってー。もう直ぐ、子羊が哺乳瓶のミルクを飲みきりそうやから。手、洗ったらすぐ行く!」


私のおばあちゃんが壁にポスターを貼りにくそうにしていたので一緒に手伝った。


「この子、有名な子で名前しってる?なんて、いったかなぁ?忘れてしまったんやけど……。4月5日、もうすぐ、ここの喫茶店のグランドピアノ弾きにくるんやで」


おばあちゃん?!


「これ、森 数馬くん、やんか!」


「かりん、知ってるの?」


知ってるも何も?!


もぉ、なに凄いビックリするんやん。


なんなん、このサプライズ。


めっちゃ嬉しいねんけど。
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