くま先輩は、苦くて甘くて時々キス。


 去年、バレンタイン前日。私は好きな人のためにバレンタインのお菓子を作っていた。私が好きな人は、くま先輩じゃなくて。くま先輩のお友だちである理也(みちや)先輩だった――だけど、渡そうと探していた私は当日にやばい場面を見てしまった。

 理也先輩は、三年生の色っぽい先輩とキスを……いやキスの先をしていた。私には衝撃的で、どうしたらいいか分からなくて走って逃げた。だけどそこは、くま先輩の縄張りの中で。

「なにしてんだ……ここがどこがわかってるのか?」
「へっ! あ、あっすみません! あ、あの、えっと」

 驚きすぎて、辛すぎて、あたふたしてしまって何も言えずにいたんだけど……くま先輩は、何かを察したのか私の作ったお菓子を奪い取り「俺、食べていい?」と言った。

「え、ぁ……」

 急なことに何もリアクションできなくて、気づけば食べられていた。

「え、うまっ! うわ、何……プロ?」
「ぷ、プロじゃないですっ! 美味しかったなら良かったです」

 ゴミ箱行きにならなくて、良かった。理也先輩じゃなくても美味しいって言ってもらえたのが本当に嬉しかった。
 それからよくくま先輩のとこに行くようになって、くま先輩の噂は間違えだって分かった。くま先輩は優しくて、顔には似合わない甘いものが好きでまるでほうじ茶ラテみたいな人で、
 そんな彼を好きになり、お互い想いを伝え合って付き合うことになったのは本当に最近。


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