扉 ~カクテルの味は恋の味?~

 金曜日が来た。まだ迷っている・・・仕事も手に付かない。ミスばかりしている・・・心臓の高鳴りが・・・顔がこわばる・・・

 Portaに着いた。
 マスターは何も言わない。

 真柴は21:00近くに駆け込んできた。水曜日から殆ど寝ていないみたいだった。
「早速だけど真奈美、どうかな、考えてくれた? 」
 真奈美は真柴の顔を見た途端、涙が出た・・・なかなか言葉が出ない。
「真柴さんのこと好きです、大好きです。でも同じくらいここPortaが好き。Portaがないブラジルで暮らす勇気がない。・・・私には無理・・・行けません。ここで真柴さんが帰るのを待っていてはいけませんか? 」
「そうか・・・」
 真柴は頭を抱えた。落ち込んでいる・・・
「真奈美・・・僕は真奈美のこと、大好きだ! バックに入れて無理やりでも連れて行きたい! 離れるのはつらい! 僕を待っていてくれるという気持ちはうれしいけど、今回はいつ戻ってこられるかわからないんだ。だから待たすことも出来ない。強制はできない。もう一度聞く、それでも一緒に来ては貰えないか? 」
 真奈美はずっと下を向いて、泣いている。

 沈黙が続いた。

「会社に戻る。また連絡する・・・」
 真柴は店を後にした。

 真柴からその後連絡はなかった。真奈美もしなかった。


 次の週の金曜日、マスターから聞いた。真柴がブラジルに発ったことを・・・。
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