扉 ~カクテルの味は恋の味?~
4月・・・
「真奈美ちゃん。ゴメン、少し留守番頼んでいい? 買い物してくる。まだ開店前だから誰も来ないと思うけど。大体15分くらいかな。」
「わかりました。大丈夫ですよ。いってらっしゃい。」
「よろしく~」
真奈美は経理の仕事をしながらマスターの帰りを待った。
5分くらいで扉が開いた。
「速かったですね。」
真奈美は頭を上げた。
「あっ・・ごめんなさい。」
背の高い、すらっとした爽やかな男性が立っていた。
「あの~お店は何時開店ですか? 」
「6時半です。すみません、今マスターが出掛けているので、よかったらおかけになってお待ちください。」
男性は時計を見た。(あと10分か・・・)
真奈美は立ち上がり、カウンター席にその男性を通した。
「ありがとうございます。」
そう言って、男性はカウンターに座った。
「お店の方ですか? 」
「従業員ではないんです。少しお手伝いをしています。」
「このお店素敵ですね。僕、最近この近くに越してきて、今日はオフだったので町を散策していたんです。そうしたら、素敵な扉が見えて・・・まだクローズのプレートがあったけど思わず開けてしまいました。」
「お店の名前、イタリア語の扉Porta って言うんですけど、マスターがこの扉を開けることで新しい出会いが出来ますように。と付けたんです。マスター学者のような顔をしているんですけど、ちょっと似合わずロマンチストで・・・フフフ」
「ただいまぁ~あれ、お客さん? ゴメンナサイ。お待たせしました。」
「すみません、開店前に。扉が素敵で、どうしても開けたくなって入ってしまいました。今、こちらの方からお店の名前の由来聞いていました。」
(ホントだ、ちょっと顔に似合わないかも・・・)
「そうですか。真奈美ちゃんありがとね。」
「僕、葛城といいます。この先に事務所兼自宅を構えて引っ越してきたばかりなので、今日は、このあたり散策していて、良く歩いたから喉乾いたし、おなかも少し減ってきて・・・」
「もしかして、コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな建物? 」
「あっ、そうです。良くわかりましたね。」
「KATSURAGI BILD.って書いてあったから。気になっていたんですよ、素敵なビルだったから。何の仕事していらっしゃるの? 」
「映像関係です。商品紹介や、CMや、プロジェクトマッピングとか、いろいろ。4人でやっているんです。」
「面白そうだね。」
「楽しいですね。でも、仕事重なっちゃったときとか、みんなで事務所にごろ寝して、グダグダになって仕事しています。結構体力勝負で、機材も多いし・・・前のとこ手狭になったので、思い切って引っ越しました。」
「へー、すごいね。まだ若いのにすごい。自社ビルだよね・・・」
「はい。」
「あっ、ゴメンナサイ。話過ぎちゃった。何飲む? 」
「まず、ビールください。」
「はい。」
マスターは答えながら真奈美をちらっと見た。真柴君と同じフレーズ・・・思い出さないといいけど・・・