扉 ~カクテルの味は恋の味?~

「今日は、初来店なのでサービスするね。」
と言って、マスターはチーズとコッパなどのつまみの一皿を出した。
「うれしい、ありがとうございます。僕コッパ大好物で、あとこのエメンタールチーズも。」
「このあと、何飲む? よかったらワインはどう? 味見で仕入れたのがあって、3人で試し飲み。どう? まだ早いからお客来ないし・・・」
「はい。うれしいです。是非・・・」

 マスターは真奈美を見て言った。
「赤ワインとこのコッパとチーズのつまみはこの真奈美ちゃんの大好物セットなんだ。彼女はね、毎週金曜日に来て、この店の経理とホームページを見てくれているの。全部作ってくれたんだ。僕はまったくそっちの方ダメだから。」
「ヘー。」
葛城は、真奈美をみて微笑んでから、スマホでホームページを見ている。
「このホームページ真奈美さんが一から作ったの? 」
真奈美はすこし照れて答えた。
「はい。葛城さんみたいにプロではないので、恥ずかしいのですが・・・」
「そんなことないよ。必要なことはしっかりわかるように、見やすく作られている。それに、このカクテルのショートストーリーが良いね。このお店らしい。」
「ありがとうございます。楽しんで作っています。」
「その気持ちが伝わって来るよ。いろんな仕事するけどクライアントと良い関係が気築けて、僕たちも楽しく作れた時はいいものが出来るんだ。あっ、偉そうなこと言ってゴメンネ。」
「いえ、ホームページ是非アドバイスして下さい。」
「僕で良かったら・・・」
葛城は微笑んだ。

 この後、マスターと3人で試飲のワインを3本開けた。いいのか悪いのかこの日はお客さんが少なくて、カウンターで3時間くらい飲んだり食べたりおしゃべりした。
3人とも好みが似ていて、ワインやつまみの話に花が咲いた。真奈美は久しぶりに楽しかった。
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