扉 ~カクテルの味は恋の味?~
スペイン料理はおいしかった。サングリアも美味しくて二人で結構飲んだ。
まだ知り合って間もないのに、とにかく楽しく話をした。真柴さんとも違うやさしさ。包み込むような、そして一人の人間として尊重してくれるような、包容力っていうのか、心地よい。なんだか、このままずっと一緒にいたい・・・
「真奈美さん。まだ知り合って間もないけど、初めて会った日から君のこと気になっていた。いわゆる一目ぼれ。会いたくてしょうがなかった。でも今回の仕事でどうしても時間できなくてなかなか会えなかった。こういう仕事だから、少し寂しい思いをさせてしまうこともあるかもしれないけど、これから少しづつお互いのこと知っていけたらと思っている。僕と付き合ってもらえませんか? どうかな? 」
葛城は落ち着いた声で真奈美に語り掛けた。
「あの・・・まだお互いのこと殆ど知らないし、ゆっくりお付き合い始められたらうれしいです。よろしくお願いします。」
「ありがとう。あーよかった。今日は、仕事もプライベートも最高の日だ! 」
葛城は満面の笑みで真奈美を見つめた。
それからもいろんな話をした。この数時間でお互いのことをとにかく話をした。充実した楽しい時間だった。
葛城 翔さん。36歳。勿論独身、結婚歴も無い。この年でこのルックスだから恋愛経験はあるだろうけど、なんか気にならなかった。彼には弟さんがいることもわかった。音楽関係の仕事をしていてロスに行ってしまい、日本には殆ど戻ってこないらしい。御両親共に亡くなっていて、親戚もお付き合いが無いとのこと。
私と境遇も似ている。でもお父様が実業家で成功されたのである程度の遺産があり、葛城さんがビルを建てられたのも、弟さんがロスに行くことが出来たのもそのおかげだと言って感謝していた。
食事の後、葛城は家まで送ってくれた。別れ際、さっとメガネを外して優しいキスをしてくれた。真奈美はその優しいキスがとても自然に感じた。それ以上求めてこない葛城の心遣いもうれしかった。
葛城は、毎日夜に電話をくれた。声が聴けるのがうれしいと言って電話だった。時間が合うときは夕飯を一緒に食べた。レストランだけでなく屋台のラーメン屋にも行った。気取らず楽しかった。それに何といっても食の好みが合った。自分が美味しいと思うものを隣で美味しいと言ってくれることがこんなにうれしいとは思わなかった。
いつも必ず家まで送ってくれた。そして、優しいキス・・・まだ葛城とはキスどまり・・・(少し寂しい?) この先はいつ・・・