扉 ~カクテルの味は恋の味?~

 私の仕事は、朝10時から6時まで。経理と事務、電話番、そして忙しい時には文字校や、HPの入れ替えを担当した。思った以上に仕事はあって忙しかった。
予想通り、あの周年行事以降仕事が激増した。でも葛城さんは人を増やさなかった。私以外は。
 一時的に仕事が増えているのかもしれないし、大所帯にしてその後小さくするのは従業員を切らなくてはいけないので人員は増やさないと葛城さんはきっぱり言った。どうしても忙しい時はアルバイトや協力会社で補った。そういう葛城さんがみんな好きだった。たまにみんなで喧嘩みたいにやりあうこともあるけど、思っていることをその場でみんな言うから、後鎖が無いというか、とりあえずみんなの意見を聞いてから葛城さんが納めていた。とにかく毎日賑やかだった。

 忙しい時は、夜食におにぎりを作ってみんなに差し入れた。みんなといるのがとにかく楽しかった。そうそう、葛城さんにお願いしたことが一つあります。Portaのこと。
「葛城さん、お願いがあります。」
「何? 改まって、怖いな~」
「Portaのことなんですけど、いままでどおり通わせてもらえますか? 」
葛城は真奈美を見てやさしく微笑んだ。
「そんなのOKに決まっている。Portaが無ければ僕らは出会っていないんだから。」
そう言って、葛城は真奈美をぎゅっと抱きしめてくれた。

 今まで通り、真奈美は金曜日の夜に会社を少しだけ早く出てPortaで経理をする。そしてHPの管理も。マスターが喜んだのは言うまでもない。仕事もだけど真奈美と会えなくなるのではという心配が大きかったのだ。

 新しいことといえば、榊さんがPortaのお店の雰囲気がわかるように店内の写真を撮ってくれた。カクテルやお料理も。勿論扉も。その写真が動くようにジョニー君が少しだけHPをリニューアルしてくれた。めちゃくちゃおしゃれになった。
 HPが良かったのか、口コミなのか、お店は繁盛した。マスターも一人ではやりきれなくなり、一人雇うことになった。ジョニー君のお友達 (ゲイではありません。ノーマルです。) ルイ君(日本人)。調理学校を出ていたが、何故かプラプラしていたので声を掛けたら二つ返事でやってきた。彼の作るおつまみ系はちょっとエスニック風で面白くて若い人に直ぐに人気となった。
 ルイ君は今カクテルの練習中。お店の開く前にマスターと一生懸命やっています。ルイ君は目が見えるか見えないかというくらい前髪が長い。まだお客さんとうまく話が出来ないイケメンでシャイな男の子。そんな彼目当ての女の子のお客さんが急増中です。(あんまり増えるのもイャなんだけど・・・)


 葛城さんは金曜日の夜真奈美を迎えにPortaに来ます。でも殆ど葛城チームが付いてきて数時間一緒に飲みます。だから結局みんな一緒。それが自然で楽しくて、幸せな時間です。

 そうそう、今まで通り私はタダだけど、葛城さんからはお代いただきます。
 フフフ。

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