指先から溢れるほどの愛を

「いやいやいや何冗談言っちゃってるんですか坂崎さんっ!舞衣ちゃん真に受けちゃダメ!縁があってここ数年私が坂崎さんのヘアサロンに通ってるってだけで、それ以上でも以下でもないんだから私たち!」

「……あ、そうなんですか……⁉︎私てっきりお二人がそういう関係なんだと思ってドキドキしちゃいました……!」

「ないないっ」


赤くなった頬を手でパタパタ仰ぐ舞衣ちゃん。

この人は、こんな純情な舞衣ちゃんに何て冗談をぶちかますんだもう!

坂崎さんは必死に弁明している私を見てクックと肩を揺らしながら笑っている。

ここにもし紗英がいたらきっと間違いなく、

『何バカ正直に否定してんのよ。ここは"そうなの、私たち深い仲なの、うふふ"って乗っかる所でしょうが!そんなんだからあんたはねぇ……』

とかなんとか、呆れた目で私を見つめながら文句を言われていたに違いない。

でも幸いなことに彼女は今日、自分の担当ページの取材に出ていて不在なのだ。助かった。


「おい相原、くっちゃべってないで奥のラックからセットアップ取って来て」


そこで藤川さんから心なしか不機嫌さの滲む声が飛んで来る。やばい。

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