指先から溢れるほどの愛を

「はは……、すみません」

「……別に、いーけど」


そう言ってそっぽを向いた藤川さんが私からセットアップを受け取る。


「もう、相原ちゃんそそっかしいー!」

「間一髪だったね。藤川ナイス!」


なんてくすくす笑う編集部スタッフの声に「お騒がせしましたー!」と頭を掻き掻き答えていると、藤川さんは私の背後に視線を向け一瞬目を細めた後、「おい、あっちで無駄話してる余裕あんなら、あとは佐野に任せてお前はこのままこっち手伝え」と言った。


「了解です!」


返事をしながら舞衣ちゃん1人で大丈夫だよね?とちらっと後ろを振り返れば、普段は柔和な顔をしているはずの坂崎さんの、なぜか鋭さを帯びた瞳とかち合った。でもかち合った瞬間彼はふっと困ったようにその目元を和らげる。


……どうしたんだろう?


気にはなりながらも私はそのまま藤川さんのサポートについた。



それからほどなくして恵麻ちゃんが現場入りし、まずはフィッティングが行われる。

次号の特集に沿って表紙用に厳選された数種類のコーディネートを実際に試着してもらい、どれで行くかを決めるのだ。

今回決まったのは大人っぽいレースとフリル使いの特徴的な白の映えブラウスとパキッとしたグリーンのタック入りカラーボトムのコーディネート。
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