指先から溢れるほどの愛を

そしてここからがいよいよ坂崎さんの出番だ。

2人がヘアメイクのためにスタジオから控室へと移動する。


……坂崎さんはあの魔法の手で、どんな風に恵麻ちゃんの魅力を引き出していくんだろう。坂崎さんの仕事している所、ちょっと覗いてみたいな……。


どうせヘアメイクが終わって撮影が始まるまでは私の手も空く。

そう思った私は居ても立っても居られず、


「恵麻ちゃんにケータリング届けて来まーす!」


と、ちゃっかり恵麻ちゃん分のケータリングを手にそう言い置いて、そそくさとスタジオをあとにしたのだった。





「お、ミーコじゃん」

「ミーコ?」


ノックをして控室に入ると、恵麻ちゃんにベースメイクを施していた坂崎さんが私の姿を認め、にやりと口角を持ち上げた。

……うん、さっき少し様子が変だったような気がしたけれど、あれはきっと気のせいだな。


「コホンっ!dearncyのあ、い、は、ら、です!恵麻ちゃん、改めまして、今日は宜しくお願いします」


主に坂崎さんに向かって"相原"を強調し鏡越しに挨拶をすれば、坂崎さんがふは、と小さく吹き出した。
< 25 / 68 >

この作品をシェア

pagetop