指先から溢れるほどの愛を
そしてここからがいよいよ坂崎さんの出番だ。
2人がヘアメイクのためにスタジオから控室へと移動する。
……坂崎さんはあの魔法の手で、どんな風に恵麻ちゃんの魅力を引き出していくんだろう。坂崎さんの仕事している所、ちょっと覗いてみたいな……。
どうせヘアメイクが終わって撮影が始まるまでは私の手も空く。
そう思った私は居ても立っても居られず、
「恵麻ちゃんにケータリング届けて来まーす!」
と、ちゃっかり恵麻ちゃん分のケータリングを手にそう言い置いて、そそくさとスタジオをあとにしたのだった。
♢
「お、ミーコじゃん」
「ミーコ?」
ノックをして控室に入ると、恵麻ちゃんにベースメイクを施していた坂崎さんが私の姿を認め、にやりと口角を持ち上げた。
……うん、さっき少し様子が変だったような気がしたけれど、あれはきっと気のせいだな。
「コホンっ!dearncyのあ、い、は、ら、です!恵麻ちゃん、改めまして、今日は宜しくお願いします」
主に坂崎さんに向かって"相原"を強調し鏡越しに挨拶をすれば、坂崎さんがふは、と小さく吹き出した。