指先から溢れるほどの愛を
「へー。ポテトサラダ、オレの大好物」
坂崎さんはそんな私に気付く様子もなく、私と目を合わせたままふ、と口角を持ち上げる。
そういう仕草の一つ一つに私の胸がいちいち反応してしまうことを、彼は分かっていない。
「えっ、じゃあ竜さん、今度一緒にMrs.サンドに食べに行きます?」
「オジサン若者が集う場所苦手だから遠慮しとくわ」
「えー、じゃあ普段竜さんが行くようなお店に一緒に行くっていうのはどうです?」
「恵麻ちゃん、この前も言ったでしょ?残念ながらオジサンにはそんな時間も体力もないの。自分の店持ちながらこうしてヘアメイクの仕事もして、休みなんてほぼないしね」
「……仕事終わりにちょっとだけ、とかでも全然いいんですよ?」
「仕事終わりのオジサンのHP、どれだけ残ってると思ってんの」
「……もう!相原さん、竜さんってばこうやっていっつも私の誘い断るんですよ?ひどいと思いません?」
「……あー、ねぇ……?」
ぽんぽん進んでいく会話に唖然としていたら急に話を振られたため、何とも間の抜けた返事になってしまった。
……ねぇ、美人で女子力のある女の子っていうのは、こんなにもさらりと自然にデートに誘えちゃうものなの?
恵麻ちゃんの可愛く唇を尖らせたむくれ顔を見ながら目を瞬かせる。
私みたいな女には到底真似出来ない芸当だ……。