指先から溢れるほどの愛を

a sense of distance(距離感)

坂崎さんとポテトサラダサンドを食べに行く日は意外と早く訪れた。

4月中旬の土曜日。

その日は私がお休みで、坂崎さんは午前中店出勤、午後からはヘアメイクの仕事で現場に行くというスケジュールだったため、その現場に行く前に一緒に食べに行こうと誘われたのだ。


待ち合わせはC’est la vieの前。

カットやカラー、ヘッドスパ目的でなくここを訪れるのは初めてのこと。

ましてやそれ以外の目的で坂崎さんに会うのももちろん初めてのことで。

この五年、美容師と客という距離感を守って来た私にとって突然訪れたこの状況に一人ソワソワしながらお店の前で待つ。

ソワソワし過ぎて、今日の服装だって何日も前から散々悩んだ。

ランチに行くだけなのにあまり気合を入れ過ぎても、ということで、最終的にお尻が隠れるくらいのホワイトのオーバーサイズスキッパーシャツにブラックベースの幾何柄のベストを合わせ、下はライトブルーのテーパードデニム。

耳より少し高い位置で緩くポニーテールにした頭にはヘアターバンをアクセントに。

ぺたんこのパンプスと小さめのスクエアショルダーバッグは淡いレモンイエローで。
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