指先から溢れるほどの愛を
「ミーコ、お待たせ」
「いっ、いえ……っ」
おかしくないかな、と前髪を弄っていたら、藍色のドアの向こうから坂崎さんが現れた。
ゆったりとしたくすみグリーンのローゲージニットに細身の黒パンツというシンプルな格好なのに、恐ろしい位に格好良い。
会うのはあれ以来で、彼の姿を認めた途端私の心臓が爆速で脈を打ち鳴らす。
坂崎さんの背後、ドアの隙間から見えた麻美さんと悟さんが仕事をしつつチラッとこっちを見てにこにこ、というかにやにやしながら手を振ってくれるけど、それに応える余裕すらない。
ギクシャクしながらも何とか手を振り返すと、ドアが閉まる直前ぷっと吹き出した二人が見えた。
「んじゃ行くか」
「ばっちこいです!」
「ふはっ!何だその返事」
そう笑って胸元に引っ掛けていたラウンドのメタルサングラスを掛ける仕草さえも絵になってしまうから、もう眩しくて直視出来ない。
私にもその眩しさを遮るサングラスが欲しい、切実に。
「はい、乗って?」
そして彼は徐にお店の前に停まっていた黒のレクサスの助手席のドアを開けて私を促した。