指先から溢れるほどの愛を
何とか顔だけ捻って坂崎さんを見上げれば、にこやかな笑みは浮かべているものの藤川さん同様その目は笑っていなかった。
この二人、実は相性が悪いんだろうか……。
「ではオレはこれで失礼します。相原も、また月曜に」
「あっ、はいっ」
慌てて顔を前に戻して答えてみたものの、口を覆われているせいでくぐもった音にしかならなかった。
それを気にする風でもなく、藤川さんはそのまま去って行き、その後ろ姿が小さくなった頃ようやく口を覆っていた手が離れた。
「何で藤川さんがここいたの」
食事が済んだ食器類は各自返却口に下げるシステムのため、何事もなかったかのようにテーブルの上を片付け始めながら坂崎さんが問う。
それを手伝いつつ、まだ冷めやらぬ顔の熱。
「……あ、何かこの辺近所らしいですよ。っていうか!いきなり口塞がないで下さいよ、びっくりするじゃないですか!しかも何でデートなんて……!」
「ミーコ。顔、赤いけどどうしたの?」
「〜〜……っ、なっ、何でもないですけどっ⁉︎」
どう考えても分かってるくせにイタズラっぽくこちらを覗き込んでくる坂崎さん。
薄々気付いてはいたけど、この人絶対Sだ!
そんな私の反応に、彼は案の定満足気に笑う。
そして二人分の食器をまとめたトレイを持ち店内へ向かって歩き出すから、私は慌ててあとを追った。