指先から溢れるほどの愛を
再び現在

shower of love(降り注ぐ愛)

あのデートから2週間足らず。今日は月一のヘッドスパの日。


"言っとくけど、客じゃないっつーのはそういう意味でミーコのこと特別に思ってるってことだから。覚えといて?"


自分の立場を弁えていたはずの私に、啄むような一瞬のキスの後落とされたその言葉。

あまりの動揺に、予定より早く現場入りしなきゃならなくなった坂崎さんの前から逃げるように去った私だったけれど、当然あの後買い物どころではなくて。

……え?あれはどういう意味……?

素直に額面通りに受け取ってしまえば坂崎さんが私のことを……ってことになっちゃうけど、そんな都合の良い話ある……?

一瞬揶揄われてる?とも思った。

でも毎回何かしら私のことを揶揄う坂崎さんではあるけれど、彼がそんなタチの悪い揶揄い方をするような人じゃないということを、私は五年の付き合いの中で知っている。

いやいや、そうは言ってもよりどりみどりで選びたい放題の坂崎さんが私なんかをって、あり得なくない……?と私は脳内でひたすら答えの出ない堂々巡りを繰り返し、藁にも縋る思いで紗英に連絡しようとして思い止まった。

なぜなら土日は彼と一泊二日の温泉旅行に行くと言っていたから。

こんなことで邪魔はしたくない。
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