ドラゴンの歌声
 怪我をした足はすぐによくなるわけではない。それでも走れるらしい。

 狼が呼んだ仲間たちの背にひとりずつ乗せてもらう。それに並走するように、怪我をした狼が走る。休憩をはさみ、狼が獲ってくれた肉を分けてもらった。眠るときは、その毛並みが毛布代わりになる。

 いろいろなことを話しながら、子供の足では難しい距離を風のように走っていく。

「はやい、はやーい」

 そういいながら笑うチカと、誇らしそうに吠える狼。そのちぐはぐな組み合わせも、縄張りの端まで来たら終わりだ。

 名残惜しそうにしているチカに、狼も鼻を摺り寄せる。

「楽しい時間だった。改めて仲間を助けてくれて感謝する」
「こちらこそ送ってくれてありがとう」

 別れの挨拶をしている妹をよそに、ハヤトは狼に感謝の言葉をいう。

 もふもふの毛並みが名残惜しくて、もう少し触っていたいなと手を延ばす。それに気づいたように身を摺り寄せてくれる。

「仲間の恩人は、仲間だ。当然だ」
「また何かあったら呼ぶといい。遠吠えでお前らのことを伝えておこう」

 そういうと狼はこれまでで一番遠くまで届くような遠吠えをする。どこか遠くで、それに応える声がするのに頷いた。

「この近くに猫人の村がある。ヒトに近いが、ヒトではない。しかしヒトに近い暮らしをしている」
「長旅で疲れただろう。そこで休ませてもらうといい」

 そういって忠告をくれるのに、ハヤトは改めて礼をいった。
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