悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜

都合の良い話

 ユリアーネに賞金を掛けられた原因は、単純に謹慎と言われていたのに、脱走したからである。皇太子アンゼルムが掛けたのだ。
 かと言って、謹慎したままだとろくな目に遭わないのは明白。後にも先にも詰んでいる。

 ちなみに、借金の事を騎士団に相談出来なかった理由は、賞金首だったから、なのだが、それはリーヴェスには伝えられない話である。

(愛人にするって事は、私が賞金首……というのは気付かれていない、という事よね?)
 借金もなんとかしてもらったし、とユリアーネはほんの少しだけホッと一安心する。
 考え事に気を取られて、とある部屋の扉の前で振り向いたリーヴェスに気付かず、思いっきり背中にぶつかった。

「わっ、ぶ……す、すみませ……」

 謝りながら慌てて離れようとするユリアーネだったが、それよりもリーヴェスが腰に手を回す方が先だった。ガッチリと掴まれて、逆に引き寄せられる。そして、額同士をくっ付けて至近距離で目線を合わせた。

「随分と積極的だね?」
「ち、ちが……っ!」

 首を横に振って否定するユリアーネだったが、リーヴェスは更にゆるりと笑みを深めた。

 随分と鮮やかな手付き。止める間もなかった。
 元婚約者のアンゼルムにすら手を出された事がないユリアーネでも分かる。
(この人、手慣れている……!)
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