悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
「リーヴェス様が愛人を迎えられたと聞いたのだけれど、本当だったのね。知らない女がいるわ」

 銀色の巻き毛。ややつり上がった猫瞳。ドレスは派手で際どい切れ込みが入っており、セクシーな見た目になっている。広げた扇子で口元を隠し、ユリアーネを値踏みするように見下ろした。

(初対面なのに、すごい喧嘩腰なのだけれど?!)
 困惑しつつも、ユリアーネは立ち上がる。ドレスを摘んでお辞儀をした。

「初めまして。私はユリアと申します。突然でしたので、あまりおもてなしも出来ませんが……」

 女性は訝しげに眉をひそめた。
 一瞬、挨拶で不快にさせてしまったか、とユリアーネは思ったが、どうやら違うようだ。自身の名を答えてくれたから。

「アマーリエよ」
「アマーリエ様。宜しくお願い致します」

 名前しか名乗らず、いきなり押し掛けてきて迷惑もいい所である。これが同じ貴族だと無礼に当たるのだが、相手はユリアーネの事を平民の愛人だと思っているのだろう。概ね事実その通りであるし、大体の貴族は平民に対して高圧的で我儘な生き物だ。だから、アマーリエが著しく礼儀を欠いている訳でもない。

 それよりも、だ。

(アマーリエ様……、アマーリエ侯爵令嬢?!)
 ユリアーネは笑顔の下で、つい最近その名を聞いたような気がする、と冷や汗をかいた。主にリーヴェス関連で。

(この人が、リーヴェス様を裏切っているという……、婚約者……?!)
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