悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
 自然と半眼になる。
 恋人の婚約者。コンスタンツェから見ると、邪魔で邪魔で仕方がないだろう。

(それどころか、アンゼルム皇太子殿下に阻まれて、中々証拠も掴めないし……)

 一番タチが悪いのは、アンゼルム皇太子がコンスタンツェの肩を思いっきり持っている事。
 最初の方こそ、アンゼルム皇太子とコンスタンツェの仲は非難された。当たり前だ。ユリアーネという婚約者がいながら、堂々と浮気をしているのだから。

 だが、無理を通せば道理が引っ込むとでも言うかのように――、アンゼルム皇太子は堂々とコンスタンツェを溺愛した。
 始めは非難していた面々も、次期皇帝に睨まれたくないとばかりに、次第にコンスタンツェに味方するようになったのである。

 父親であるエクヴィルツ公爵も、後継者である異母兄も、ユリアーネの真の味方ではない。元々平民の血が入っているユリアーネを軽蔑していた2人は、政治的価値がなくなったと判断した瞬間、ユリアーネを切り捨てた。

 皇太子の婚約者になる為だけに、公爵家に引き取られたユリアーネには、貴族の味方はいなかった。
 命を狙われても、血の繋がった家族は守ってくれないのである。

 ユリアーネの気苦労等知らない令嬢達は更に話し続けた。

「わたくしだったら、あんなに仲睦まじいお2人の仲なんて引き裂けないわ……。婚約者の地位に堂々と居座るなんて出来ないわよ」
「ええ。お2人のお姿がお目に入らないのかしら?」

 もう一つこっそり深い溜息をついて、何か飲み物でも取りに行こう、とその場を離れようとした時にユリアーネは敏感に察知した。
 この空間の流れの変化を。

「ユリアーネ・エクヴィルツ公爵令嬢。僕は前々から君に忠告していたはずだ」
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