悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
 いきなりの質問に思わず素っ頓狂な声を上げたユリアーネだったが、誤魔化すように続けた。

「あ、あの……、城下町のちょっとお高そうなレストランの店員の真似をしたのよ……」
「そうなのですか?」
「そうそう!だから、ちゃんと出来たか不安だったの……」

 キョトンとした顔のイルゼに、内心冷や汗ダラダラ流しながらユリアーネは必死で誤魔化す。
(所作に関しては、叩き込まれてるから出てしまっていたのね……気を付けないと……)

 酒場のウエイトレス時代も、自分は平民として馴染めていたと思っていたが、もしかしたら不審がられてしまっていたかもしれない。

「そういえば、イルゼとパウラは私の所に配属になる前は、誰の所で働いて――」
「アンタが兄上の愛人?」

 ユリアーネの言葉を遮るように、男の声が被った。

「だ、誰?!」

 聞き慣れない声がいきなり寝室に響いたのだ。ユリアーネは夜着の上の羽織りを握り締めて立ち上がる。イルゼはユリアーネを隠すようにして、男との間に立った。

 男は銀髪の長い髪を1つに結び、シャツにズボンという城に似つかわしくない、随分とラフな格好だった。不遜な態度で何故か窓から堂々と入ってくる。
(――待って、この人さっき〝兄上〟って……)

「コルネリウス殿下?!何故こちらに……?!」

 パウラが焦った声と共にイルゼの隣に並ぶ。
(え、この人が第二王子のコルネリウス殿下?!)
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