悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
 コルネリウスは紅色の瞳を細めながら、イルゼとパウラの後ろに隠れたユリアーネをジロジロと値踏みする。そして、ある程度確認したのか、呆れるように深い息をついた。

「これまた随分と……兄上は貧相な体つきの女が好みなんだなあ」
「貧相」

 あまりにも失礼な物言いに、思いっきり眉間に皺を寄せたユリアーネ。イルゼも黙っていられなかったらしく、口を開いた。

「お言葉ですが、コルネリウス殿下は何故こちらに?夜分遅い時間に窓から女性の部屋に侵入など、あまりにも不作法です」
「固いなあ。まあ、兄上に見せてくれって頼んでも見せてくれなさそうだし?だから、思い立って来ちゃった感じかなあ」

 コルネリウスは肩を竦めて、おどけたようにイルゼに答えた。そして、一歩ユリアーネの方へと踏み出す。

「それじゃあ、改めて。オレはレームリヒト王国第二王子、コルネリウス。アンタの名前は?」
「ユリア……です」

 軽薄な態度で問いかけるコルネリウスに、ユリアーネは警戒心を顕にしながら自己紹介をした。
(リーヴェス様が仰っていた第二王子のコルネリウス様……慎重に接しないと。私の正体の事もあるし……)

 一歩一歩近付いてくるコルネリウスに、ユリアーネは身構えた。イルゼもパウラもだったようで、室内に緊張感が走る。
(でも、この状況は、一体何を考えているのだろう……?!)

 その空気を察してか、コルネリウスは肩を竦めた。

「まあ、そんな警戒するなよ。別に女に困ってる訳じゃない」
「夜這いしてきてその台詞は信用出来ないね」

 掴みどころのない調子のコルネリウスに、タイミング良く現れたリーヴェスは口元に弧を描いていた。

「リーヴェス様?!」
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