悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
「聞け!!」

 コンスタンツェの腰を抱き寄せたアンゼルムが、腹の底から声を張り上げる。
 それは、ユリアーネだけを指してはいなかった。その場にいる全員に向けての言葉だった。

「コンスタンツェ・ヘルツフォルト嬢のお腹の中に私の子供がいる!彼女を害する者は――、王族を害すると同義だと思え!!」

(嵌められた!!)
 次代の皇帝の子供。男子ならば、跡継ぎになってもおかしくはない。
 婚約者ではない令嬢との子供。とんだ醜聞。

 だが、皇太子とその令嬢はずっと関係性をオープンにしてきた。逆に皇太子は婚約者を冷遇している。
 大事に愛され、身篭った愛人。そして、冷遇され、王族を害したと言われた婚約者。

 どちらの味方をすればいいのかは、明白である。
 顔色を無くしたユリアーネを、アンゼルムは真っ直ぐに見据えて、告げた。

「ユリアーネ・エクヴィルツ公爵令嬢。お前は謹慎だ。追って皇帝陛下が沙汰を下されるだろう」

(コンスタンツェ様に刃向かった人間に対する見せしめ……って事ね……っ!)
 近衛兵に周囲を囲まれたユリアーネは、手の中の扇子を握り締める事しか出来なかった。
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