悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
このままでは、借金は返しきれない。高利貸しが乗り込んできた以上、職場にこれ以上迷惑掛ける訳にもいかない。
(初めて会う人だけれど、この人の提案を呑むのが一番良いのかもしれない――)
「ね?悪い話じゃないだろう?……それに、」
一拍区切って、男はチラリと高利貸しを見た。
「君に返せない借金を作らせた人達よりも、俺の方が信頼出来るんじゃないかな?」
「そう……ですね……」
それ以上に、ユリアーネには大きな利点があった。
逃げ続けなくて済む、というメリットが。
不特定多数が出入りする酒場では、隣国の婚約破棄の出来事を知っている人間がいるかもしれない。そうした環境の中で仕事をするのは、中々に神経をすり減らす事だった。
勿論、バレたら即刻辞めるつもりではいたのだ。だが、次の仕事先が見つかるかは、全くの未知数。
それならば、愛人という立場ではあるものの、生き延びる為には一番確実な手段である。
それが決め手、とばかりに前のめりになったユリアーネに、男は凄く良い笑みを浮かべる。そして、どこから取り出したのかも分からないペンを差し出した。
「そう言ってくれると思っていたよ」
男からペンを受け取ったユリアーネは、サラサラと自身の名前を契約書に書く。
「これは、素直で逆に心配になるな……」
ボソッと呟いた男の言葉を拾えなかったユリアーネ「え?」と一瞬顔を上げる。
そんな声を男はなんでもないよ、と誤魔化した。
(初めて会う人だけれど、この人の提案を呑むのが一番良いのかもしれない――)
「ね?悪い話じゃないだろう?……それに、」
一拍区切って、男はチラリと高利貸しを見た。
「君に返せない借金を作らせた人達よりも、俺の方が信頼出来るんじゃないかな?」
「そう……ですね……」
それ以上に、ユリアーネには大きな利点があった。
逃げ続けなくて済む、というメリットが。
不特定多数が出入りする酒場では、隣国の婚約破棄の出来事を知っている人間がいるかもしれない。そうした環境の中で仕事をするのは、中々に神経をすり減らす事だった。
勿論、バレたら即刻辞めるつもりではいたのだ。だが、次の仕事先が見つかるかは、全くの未知数。
それならば、愛人という立場ではあるものの、生き延びる為には一番確実な手段である。
それが決め手、とばかりに前のめりになったユリアーネに、男は凄く良い笑みを浮かべる。そして、どこから取り出したのかも分からないペンを差し出した。
「そう言ってくれると思っていたよ」
男からペンを受け取ったユリアーネは、サラサラと自身の名前を契約書に書く。
「これは、素直で逆に心配になるな……」
ボソッと呟いた男の言葉を拾えなかったユリアーネ「え?」と一瞬顔を上げる。
そんな声を男はなんでもないよ、と誤魔化した。