一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
 夜中の零時すぎまでクリスマスケーキの仕込みをし、一旦家に帰って仮眠程度の睡眠をとり、また暗い中を歩いて店まで向かう。時刻は午前四時。はっきりいって寝た気がしない。毎年のことなので慣れてはいるが段々歳をとったことを感じさせられる。やっぱり二十代前半のときのは身体が違うと嫌でも思い知らせれるのがクリスマスだ。


「シンドイ……」
「それは俺も同じだ……」


 健も家にシャワーだけ浴びに帰ってすぐに戻ってきたらしい。自分より二歳年上の健もひぃひぃ言いながら作業を進めていた。


「お肌ボロボロよ」


 綾乃もプレートにチョコペンで文字を書いたり、クリームを泡立てるのを手伝ってくれている。三人でぶつぶつ独り言を言いながら進めていく作業場は傍からみれば恐ろしい現場に見えるかもしれない。そのくらい今年はケーキの量が多い。


「お、終わったぁぁぁ〜」


 ぷしゅ〜っと空気の抜けた風船のように日和はスタッフルームのテーブルに突っ伏した。もちろん横を見れば健も綾乃も脱力している。時刻は既に午前九時をまわっていた。開店まで一時間切っている。


「片付けやらなきゃ、掃除もしなくちゃ……」


 ケーキが作り終わったから終わりではない。ここから開店準備をし、どさっと訪れるお客さんのケーキ受け渡しが待っている。
 日和たちは重い腰をあげ「やるぞーっ!」と最後の気合を入れた。
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