一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
「いってぇな! 何すんだよクソ兄貴!!!」
(は? 兄貴?)


 こいつは何を言っているんだ? 洸夜に殴り飛ばされた悠夜は怒りで顔を真赤にし、日和を抱きしめている洸夜に殴りかかってきた。


「きゃぁっ」


 日和の悲鳴と共にバキッと骨と骨が強く当たった音がした。


「っいってぇな……てめぇ、殺されてぇの?」


 口の中に鉄の味がジワジワ広がる。


「はっ、何が殺されてぇだよ。母親一人守れなくて、好きな女も守れないような男にできるわけないじゃん。日和さんの唇柔らかかったなぁ」


 悠夜は洸夜を見下すように嘲笑った。
 怒りは身体からはみだすどころかもう爆発した。自分を嘲笑う悠夜に飛びつき胸ぐらを掴む。


「てめぇ、さっきからなにふざけたこと言ってんだ。日和にしたことも……許さねぇぞ」
「何も知らないで気楽に生きてきた坊っちゃんがうるせーよ」


 三人しかいない暗い部屋に悠夜の地割れするかのような怒鳴り声が響いた。怒りに満ちた目を洸夜に向けてくる。その瞳はどこか悲しげな色も混じっているように見えた。


「はぁ? どういうことだよ!」
「ははっ、本当に何も知らないんだ。可愛そうだから教えてあげるよ」


 乾いた笑みを浮かべたと思ったら、すぐに洸夜を睨みつけ口を開いた。


「お前の母親の名前は?」


 ……は? 突然の母親の名前はって……悠夜がなにを考えているのか全く分からない。


「俺を捨てた母親の名前なんか忘れたよ」


 もう思い出したくはない。悠夜の胸ぐらを掴む手に更に力が入る。日和が見ていなかったらボロボロに殴っていたかもしれない。

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