イジワルな君の一途で不器用な恋心
始まりは電車の中で
満開だった桜が葉桜へ変わった4月。
いつもより5分早く駅に着いた私は、駐輪場に自転車を停めて改札口へ向かう。
「よっしゃ。今日も1番っ」
周りを見渡した後、拳を握って小さくガッツポーズ。
列に並ぶ人々の後ろを通過して、先頭車両が止まる乗り場へ。
ホームの端っこって、並ぶ人が少ないからスムーズに乗れるのよね。
といっても、この時間帯は通勤通学ラッシュ。
基本的にどこの車両も混んでいるけれど、埋もれて苦しむ時間が少しでも減るかなと思って、毎朝ここから乗っている。
スマホのカメラを自撮りモードにして髪の毛の乱れを整えた。
まだ電車が来るまで時間あるし、今のうちに回収しときますか。
ゲームと書かれたフォルダを開き、アプリを起動。
よし! ガチャ券とジュエルゲット!
「おはよー、りんコブラ」
今日分のログインボーナスを受け取った直後、隣から憎たらしい人物の声が聞こえた。
「今日も綺麗なポニー……スネイクテールだな」