イジワルな君の一途で不器用な恋心
手すりを強く握りしめて揺れに耐える。
どうして今日に限って柄にもないことを言うんだよこいつは。
ガチギレしたから機嫌取ってるの? それとも、何か企んでるとか、やましいことでもあるわけ⁉
今更褒めたって、何も出ないんだから。
「ん? なんか耳赤くね?」
「踏ん張ってるの……っ」
なんでそこに注目するのよーー! あんたが今見なきゃいけないのはお団子でしょ⁉
もう、せっかく景色見て意識逸らしてたのに……。
すると、再び電車がガタンと揺れた。
両手に力を入れてこらえたのだけど、私の髪の毛を持っている雷夜は当然踏ん張れず……。
「……わりぃ」
少し掠れた声が耳元で響き、肩が跳ね上がった。
窓に張りつく華奢ながらも大きな手のひら。
後ろからは、清潔感のある香りが漂ってきて。
そして背中に感じる温かさは、恐らく……。
「大丈夫か?」
「うん……っ」
大丈夫、潰れてないから。どこもぶつけてない、痛くないから。
だから、耳の近くで話さないで……っ。