イジワルな君の一途で不器用な恋心

右肘で脇腹を突いた。


……いや、それはないか。

物の貸し借りは漫画が最後。最近だとゲームソフト入れ替わり事件があったけど、データは無事。外傷もない。


だとしたらからかってるだけ? ケラケラ笑ってるし。



「そうそう、古松さんで思い出したんだけどさ、また一緒に勉強会やらねーか? 今月空いてる?」

「あぁ……ちょっと待って」



バッグからスマホを出し、スケジュールアプリを起動する。



「……ごめん、今回はパスで」

「え、マジ? 1日もない?」

「テスト前は空いてるけど、1人で集中したいから……」



先月に引き続き、今月もテスト直前の休日以外、全てオープンキャンパスと学校説明会の予定で埋まっている。


赤点を回避したいからというのも理由の1つではあるのだけれど、1番は心が不安定だから。

こんな状態で参加しても頼りにされるどころか足を引っ張りかねないし、勉強の邪魔になるだけ。


迷惑をかけないためには断るしかなかった。



「了解。その様子だと、来月も埋まってる感じ?」

「……うん」



テスト終了後の休日から夏休み前の休日まで、進路関係の予定でパンパン。

夏休みに入ったら平日も開催されるので、丸1日空いてる日はお盆期間くらい。


雷夜はバイトで忙しいだろうし、ミワワちゃんも今度は夏休み限定のバイトに応募すると言っていたから……3人で集まれるのは2学期以降だと思う。



「本当にごめん。犬カフェは、もう少し後でいい?」

「おぅ、いいよ。まだ人多そうだし。あんま無理すんなよ」



恐る恐る横を向くと、微笑んだ顔で頭をポン。

顔中が熱くなるのを感じつつ、断って正解だったと胸を撫で下ろしたのだった。
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