イジワルな君の一途で不器用な恋心
「注文するのはいいけど、多すぎると決めるのが難しくなるから程々にしなさい」
「はーい……」
しぼんだ声で返事をし、パンフレットを抱えてリビングを出た。部屋のドアを肘で開けて机の上に下ろす。
専門学校だけで10校は……頼みすぎたかな。
今月も短大のが届く予定だから、そろそろ置く場所を確保しないと。今日はとりあえずここに置いとこう。
種類別に分けた後、再度重ねて端に寄せた。
◇
日曜日の夕方。
「はぁ……かっこいい……」
動物園帰りの電車内。スマホ片手に吊り革を掴み、撮った写真を眺める。
タクマくん、また一段とイケメンになってたなぁ。
毎回見る度に思うけど、本当、両親のいいとこ取りよね。さすが、動物園の美少年ゴリラ。
待ち受け画面に設定すると、アナウンスが流れて駅に停車した。乗る人達の邪魔にならないよう、奥に移動する。
休日なのもあって、平日よりも多い。
でも、朝の通勤ラッシュに比べたらまだマシね。
電車に揺られること数分。窓の外に見慣れた景色が見えてきた。
そろそろかな。えーと、定期定期……。