イジワルな君の一途で不器用な恋心
「ごめん、話逸れた。色々と予想してみたけど、1番は自分がどう感じたかだから」
顔を上げると、切れ長の目が私を真っ直ぐ見据えていた。姿勢を正して上半身を彼に向ける。
「まずは胸の内を全部吐き出す! 紙とかスマホのメモに」
「声に出すんじゃなくて?」
「もちろん、誰かに話す方法もいいよ。だけど、これから先、時間取りづらくなると思うからさ」
確かにそうだな。2学期入ったら部活も引退するし。同級生に相談するのは難しそう。
「可視化させると、どのくらい悩みがあるのかもわかるし」
「なるほど……」
「注意点は、湧き上がってきた思いは絶対無視しないこと。間違っても、『私が雷夜にドキドキするなんておかしいわ……!』って消しちゃダメだよ」
本日2度目の禁止を受けた。
だからそれ逆効果なんだってば。
そう言い返す余裕もなく、目を見開いたまま口をパクパクさせる。
「なんで……っ、いつ気づいたの?」
「バイクに乗った時から、なんとなく。話聞いて確信した感じかな」
ううっ、相談中ならまだしも、会ってすぐ勘づかれてたなんて……っ。
っていうか私、ヘルメット被ってたよね⁉
目元以外隠れてたのに、どこでわかったの……⁉
「悔しいかもしれないけど、素直に向き合うことが解決への近道だから。ごめん、雷夜見つけた。ちょっと移動できる?」
「うん……」
諭されたのもつかの間、荷物を持って席を立つ。
……恥ずかしい。
核心を突かれたことよりも、感情丸出しな自分自身が。
いい加減大人になろうよ、小さい子どもじゃないんだからさ。
穴に入りたい気持ちを抑えて逃走を再開したのだった。