イジワルな君の一途で不器用な恋心
「わかったのは、一緒に来たわけじゃなくて偶然会ったってことだけ」
「デートじゃなかったんだ?」
「うん。それは良かったんだけど、俺の顔全然見ようとしてくれなくてさ。目も、合わせてもすぐ逸らされて。何か気に障るようなことしちゃったのかな……」
会えて嬉しかった反面、あからさまに拒否されたのがショックだったという一ノ瀬くん。
恋仲でなかったのは安心したけれど……あの市瀬ちゃんがそんな態度を⁉
控えめで礼儀正しくて、先輩後輩、先生と、全方位好感度抜群な優等生なのに。信じられないんだけど……。
一体何があったのだろうと心配していたら、部室に到着した。
「失礼しまーす」
ドアを開けた一ノ瀬くんの後に続いて中へ。
「あ! 零士先輩!」
「颯くん! 久しぶり!」
入るやいなや、黒髪の男の子が席を立って駆け寄ってきた。
へぇ、バイク同好会のメンバーなのか。
三原くん以外にもいるのは知ってたけど、同じ部活の子だったとはビックリだ。