イジワルな君の一途で不器用な恋心
盗み聞きした後、ひょこっと一ノ瀬くんの後ろから顔を出す。
現在の時刻は午後12時過ぎ。
今日から三者面談なのもあってか、全体的に空席が目立つわね。あと、お昼ご飯食べてる子もチラホラいる。
雷夜は……まだ来ていないみたい。
「あ! 市瀬ちゃん!」
部屋全体を見渡していると、入口近くの席に座る市瀬ちゃんを見つけた。
再会を喜ぶ彼らを押しのけて彼女の元へ向かう。
「こないだのユキちゃんの写真、ありがとね! チョー可愛かった!」
「いえ……。先輩こそ。たくさん写真をありがとうございました」
ユキちゃんっていうのは、市瀬ちゃんのお母さんの元愛犬。以前動画を見せてもらった時に出てきたワンコのこと。
お礼に送ったハナの写真、喜んでくれたようで良かった。
けど……心なしか、いつもより声に元気がないように感じる。
「今日はどのグループにお邪魔する予定なの?」
「犬グループです」
あぁ、やっぱり。
ギクシャクしちゃったこと、まだ気にしてるのかな。笑顔も少しぎこちないし。