イジワルな君の一途で不器用な恋心
「そっちはどっか行った?」
「動物園に行った」
「あー、推しね。タクヤだっけ」
「タクマ。そろそろ覚えて」
「へいへい、すみませんね」
ヘラヘラした軽い謝罪。
はぁ、まったくもう。本当犬にしか目がないんだから。
「拗ねんなよ。こないだ2人乗り解禁したし、推し活するなら駅まで送るぜ?」
「あ、結構です。遠慮しときます」
やんわりとした笑顔でキッパリ断った。
今月で初心者を卒業したみたいだけど、まだ乗るには早い気がする。
家族を乗せるとかして、もう少し練習を積んだほうがいいというか……。
「なんだよ、せっかく人が親切心で言ってるのに」
「そうだけど……なんか、あんたの運転怖そうだし。一ノ瀬くんのほうがマシだと思う」
実は一ノ瀬くんも、雷夜と同じ時期に免許を取ったバイク乗り。
それで先週、バイク同好会という謎の集まりを2人で作ったんだそう。
ここでは雷夜がリーダーで、一ノ瀬くんが副リーダーなんだって。
「はぁ⁉ 怖そう⁉」
「だって……」