イジワルな君の一途で不器用な恋心

朝からしょうもないことで言い争う。

長期休暇に入っても相変わらずの雷夜だけど、私はというと──。



「ん? 髪切った?」

「おぅ。よく気づいたな」

「首周りスッキリしてたから。横の毛も短くなってるし」

「おおーっ、切ったとこ全部当てられた。似合う?」

「うん。夏っぽくていいと思う」

「マジ? サンキュ」



何の捻りもない、当たり障りのない感想。

だけど、変化に気づいてもらえたのがよっぽど嬉しかったのか、くしゃっと目を細めて笑った。


まだ会って1分も経ってないのに。これまで何百回と見てきた顔なのに。

眩しすぎて、直視できない。



「そっちも似合ってるぞ。スネイクテール」

「はいはい、どうもありがとう」



到着した電車に乗り込み、騒ぎ出した胸の鼓動を見慣れた街の風景で落ち着かせる。


恋心が芽生えてから、毎日ドキドキしっぱなしで、何をするにも上の空。

当然勉強も、集中力が散漫してなかなか進んでおらず。

もう夏休み中盤だというのに、まだ1つも宿題が終わっていないという由々しき事態に陥っている。
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