イジワルな君の一途で不器用な恋心
雷夜と通話しながら壁掛け時計を見る。
時刻は5時3分。もう5分ほどしたら出発して、5時20分台の電車に乗る予定だ。
「どうかしたの?」
【実はさっき、古松さんから連絡が来てさ。電車が遅延してるって】
「ええっ⁉ 何分遅れ?」
【そこまではわかんねー。お前が出発してたらいけねーと思って急いで電話したから】
そんな……。5分10分とかならなんとかなるけど、1時間近くだったらダンスパーティーの受付に間に合わないよ……っ。
【でさ、お前がいいなら……バイクで行かね?】
……え? 今、何と言いました……?
【古松さんは親に送ってもらうって言ってたけど、そっちは難しいだろ】
「まぁ……」
家にはお母さんがいるから、頼めるには頼めるけど、まだお父さんが帰ってきていないので、それだと大和を1人にさせてしまう。
ここから学校がある地域までは車で1時間近くかかるから、ざっと計算して往復約2時間。
もう中学生だし、ハナもいるから寂しさは紛れそうだけど……お父さん帰ってくるまで1人で留守番は不安よね。だんだん暗くなってくるし。