イジワルな君の一途で不器用な恋心

無視して琳子の腕を取り、速歩きで先へ進む。


現在の時刻は、もうすぐ1時45分を回るところ。

これから来園する人も多そうだが、俺達は既に到着から3時間が経過している。


琳子の両親には、『晩ご飯の時間には帰ります』と伝えているので、遅くても3時にはここを出ないといけない。


最初はツヨシのために時間使いたくないって思ってたけど、やっぱ会えないで終わるのは悔いが残りそうだから。

一目でもいいから顔を見たい。



「もう1回聞くけど、見た目の特徴は?」

「えええ……言わなきゃダメ?」

「ダメ。そもそも『着いてからでいいじゃん』って今朝言ってただろ。1人よりも2人で捜したほうがはえーし」



早口で説明しながらカンガルーを写真に収める。


担当エリアに行ったとしても、今日は日曜日。

人混みのせいで気づかない、または、相手があちこち移動しててすれ違ってしまうことだってあるかもしれない。


すると、観念したのか、はぁ……と諦めの溜め息が漏れて。



「……筋肉質で、顔はキリッとしてる」
< 293 / 314 >

この作品をシェア

pagetop