イジワルな君の一途で不器用な恋心

凛々しい顔のムキムキイケメン。
新人に間違えられるくらいの童顔中堅飼育員。

ここで逃したら6時に起きてまで出向いた意味がない。


捜せ、なんとしてでも捜すんだ……!



「ツヨシくーん!」



立ち止まって乱れた呼吸を整えていると、再び名を呼ぶ声が聞こえた。

キョロキョロと周りを見ながら歩を進め、制服姿の男の人を捜す。


多分、このあたりから聞こえたような。くそっ、人が多すぎて全然見えねー。


右手を日除けにして目を凝らしていたら、今度はポコポコポコという可愛らしい音が聞こえた。



「かっこいい〜!」

「すごーい!」

「ツヨシくーん! こっち向いて〜!」



その直後に上がった歓声の中には、捜し求めていた名前が。


まさかそんなはずは……と思い、大勢の人で賑わう柵の向こう側を覗いてみる。


そこにいたのは、全身真っ黒の毛むくじゃらの獣が数匹。

中でも高台の上に座っているボスらしき個体は逆三角形の体型で、背中が白っぽくなっている。
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