イジワルな君の一途で不器用な恋心

呆然自失になっていると、お客さんの声に反応したツヨシが立ち上がり、ドラミングを披露した。


あぁ、またファンサービスしてる。

くそっ、俺よりもいい身体しやがって。やっぱりお前は罪な男だ。


チラッと隣を見ると、瞳をキラキラ輝かせて動画を撮っていた。


復活早っ。どんだけ楽しみにしてたんだよ。

ベストショット撮ろうかなと思ってたけど……ここは俺の出る幕はなさそうだな。


数年ぶりの再会を楽しむ彼女の邪魔をしないよう、先に1人で回ると言い残し、1枚だけ写真を撮ってその場を後にしたのだった。







出発時間の3時。出入口で琳子と待ち合わせし、動物園に別れを告げて駐輪場へ。

来た道を戻って帰路に就く。



「そういえばさ、中学の時に初めて行ったって言ってたけど、小学生の時はどこに行ってたの?」



信号待ち中、後ろにいる琳子に質問を投げかけた。



「タクマくんがいるところよ」

「へー。一緒に暮らしてたんだ」

「そりゃ家族だからね。小学校卒業するタイミングで繁殖のために転勤したのよ」

「ふはっ、転勤って。そこは転園だろ」
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