イジワルな君の一途で不器用な恋心
呆然自失になっていると、お客さんの声に反応したツヨシが立ち上がり、ドラミングを披露した。
あぁ、またファンサービスしてる。
くそっ、俺よりもいい身体しやがって。やっぱりお前は罪な男だ。
チラッと隣を見ると、瞳をキラキラ輝かせて動画を撮っていた。
復活早っ。どんだけ楽しみにしてたんだよ。
ベストショット撮ろうかなと思ってたけど……ここは俺の出る幕はなさそうだな。
数年ぶりの再会を楽しむ彼女の邪魔をしないよう、先に1人で回ると言い残し、1枚だけ写真を撮ってその場を後にしたのだった。
◇
出発時間の3時。出入口で琳子と待ち合わせし、動物園に別れを告げて駐輪場へ。
来た道を戻って帰路に就く。
「そういえばさ、中学の時に初めて行ったって言ってたけど、小学生の時はどこに行ってたの?」
信号待ち中、後ろにいる琳子に質問を投げかけた。
「タクマくんがいるところよ」
「へー。一緒に暮らしてたんだ」
「そりゃ家族だからね。小学校卒業するタイミングで繁殖のために転勤したのよ」
「ふはっ、転勤って。そこは転園だろ」